京都大学 大学院 医学研究科 リアルワールドデータ研究開発講座

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RWD講座

設立の背景

がん治療は変革期にはいり、バイオマーカーに基づく精密医療(Precision Oncology)の体系確立が求められ、患者一人一人に合った治療を提供することを目指しています。また、がん組織および血液中での遺伝子変化に加え、エピゲノムの解析、さらにはがん免疫療法の進歩により微小環境などの解析をもとにした治療法の開発が急速に進んでいます。一方、治療薬、検査値・有害事象などの様々な診療情報を活用し、いわゆるリアルワールドデータ (RWD)からエビデンスを構築する取り組みが世界的に進められています。

京都大学では、2014年にがん患者由来の生体試料を治療前後の時系列で収集するキャンサーバイオバンク(CBB)を立ち上げ、すでに6000例以上が登録されています。2017年11月には利活用を促進するためにクリニカルバイオリソースセンター(CBRC)に組織変更を行い、臨床データとリンクした統合データベース事業も進んでいます。さらに、学外でのアカデミックなプロジェクトとしてCyberOncologyによる電子カルテのRWDを収集する体制を構築しました。2016年~2018年におけるAMED臨床ゲノム情報統合データベース事業のなかで、国内7大学の異なるベンダーの電子カルテ情報を統合することに成功し、わが国におけるRWD収集の基盤を構築しました。

この様な背景の中、RWDを利活用し医療の効率化・最適化に資する研究の重要性が求められ、新たな産学共同講座設立の構想が立ち上がり、平成元年10月に岩井一宏医学研究科長・黒田知宏医療情報学講座教授・武藤学腫瘍薬物治療学講座教授・日本電信電話株式会社是川幸士様を中心とする運営委員会より本講座の設置が申請・承認されました。また、同時に腫瘍薬物治療学講座の支援していた「臨床腫瘍薬理学講座・緩和医療学講座」と「臨床システム腫瘍学講座」を発展的統合し、さらなるプロジェクトを発展させる新講座を設立するために支援を募り、日本電信電話株式会社(NTT)・キヤノンメディカルシステムズ株式会社・みらかホールディング株式会社(2020年7月よりHUグループホールディングス)の3社より出資を頂けることとなり、2020年4月1日より産学共同講座として京都大学大学院医学研究科リアルワールドデータ研究開発講座が誕生致しました。

さらに当講座の研究開発を社会実装するため、2020年2月3日、京都大学とNTTは「新医療リアルワールドデータ研究機構株式会社(PRiME-R)」を設立し、リアルワールドデータを活用した全く新しい産学連携の取組を開始致しました。PRiME-Rは、日常診療での臨床情報(RWD)を極めて高いセキュリティーレベルで管理・統合・解析し、医療の最適化と医療実態の可視化を図るとともに、医療技術の向上と効率的な医薬品・医療機器開発につなげ、次世代医療の発展に貢献する役割を担います。